2009.08.15(Sat)

父は戦争にいった 

 1917年。西の都市部からロシア革命の火の手があがったとき、数奇な人生を送った祖母、そして祖父は、まだロシア領内にいました。 商売をしていた西シベリアのオムスクと、その隣り町のトムスク。 祖父のベルトの内側にはいつも1丁のピストルが差され、上着の内ポケットには 非常時救急用の阿片(痛み止めの麻薬)。

 東へ東へと脱出を急ぐ途中、祖父が高熱で動けなくなり、ロシア兵に捕らえられることに。もはやこれまで、と観念しかけたところ、重篤な病状に より病院へ収容され、意外にも手あつい看護を受け、快復後解放されたとのこと。 それから28年後。 今度は父が、そのときの祖父母とは逆の西へ 向かうルートをたどることになろうとは……。

ウクライナの首都キエフ Kiev, Ukraine

 1942年、朝鮮半島の日本軍に召集され、1945年8月、旧満州ハルピンで終戦を迎えた父は、突然、怒涛の如くなだれ込んできたソ連軍に 捕縛され、まだ相当数いた他の日本兵とともにシベリア鉄道の貨物列車に詰め込まれました。

 ハバロフスク ~ チタ と通過して、イルクーツク に差しかかるあたりで、一瞬視野に入った軍艦の停泊する海。しかし、てっきり海だと思ったのは、 広大なバイカル湖。

 列車はすすみ、クラスノヤルスク ~ ノボシビルスク と通過する。その前後には、ロシア革命蜂起までの数年間祖父母が商売を営んでいた、 西シベリアの2つの町 トムスク と オムスク。

 父を乗せた列車はまだ止まらない。チェリャビンクス を通過して、さらに西へ西へ。

 …… えんえん1万3000キロほど揺られた劣悪な抑留列車が到着したのは、モスクワの南西ウクライナ地方(現 ウクライナ)。そこはロシア というより、“東ヨーロッパ”と呼んだほうがふさわしい。収容されたのは、世界制覇の妄想に取り憑かれた狂人ヒットラーが激しく攻撃し、破壊 した都市、…キエフ、…それにハリコフ。[ ウクライナ地図-外務省 ]

 父はその2つの町で3年間、強制労働に従事させられることになりました。緯度の高い寒冷な土地にもかかわらず、父はそこでマラリアに罹り、 生死をさまようことに……。

「 夕方になると、きまって熱がでたもんだった 」

 どこか遠くをぼんやり見やるときのような物腰で、そんなふうにいっていました。治療薬は、苦いキニーネ。

「 死ぬんだな、ここで 」

 病気でなくとも、ばたばた死ぬのだから、なにひとつ不思議なことはありません。賽の河原にほとんど両足を突っ込んだときには、思い出すはずの ないはるか昔のささいな記憶までが、あっというまに脳裏を駆け巡ったと、いっていました。

 しかし、父は、生き残った。極限の空腹で、歯にかぶせてあったかすかな金を剥がしてパンと交換したり……、とにかく、あの手この手で、生き残った。

 かつて何度か、黒海やカスピ海なんかの話もしてくれましたが、くわしいことはもう憶えていません。なんとか生き延びた父は、3年後、舞鶴へと復員 してきました……。そんな父が息子に教えたロシア語は、「ダー」と「ヤポンスキー」のふたつ。ロシア人の口真似をした声が、いまも耳に残っています。



  父は戦争にいった ~覚 書~



● My grandparents were still in a Russian territory when Russian Revolution happened in 1917. It is Omsk and Tomsk that grandparents lived. They did small business there. Then they left from Russia soon...

● My father participated to the Second World War in Asia.

After the war(August 1945), he was caught to Russian(Old Soviet) forces. Then, they carried my father on the Trans-Siberian Railway.

A month later, he arrived in Ukraine(Old Soviet territory). He was forced to work in Kiev and Kharkov for 3 years.

My father died in December 1999.

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テーマ : 歴史 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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2009.01.01(Thu)

今宵みる夢 



 元旦の白昼に鳥現われむ今宵みる夢告げて去りしや


歌集「演戯絵巻」より


 紅白にも、裏番組にも、カウントダウンにも関心がなく、年賀状もださず、黙然と、送り、迎える、大みそかと新年。朝陽(あさひ)が昇るのはなにも元日にかぎったことではなく、太陽は、日々、顔をだし、地球に新たな軌道を描いている。いわば毎日が初日の出 ……。

 と、そんなことを考えていた明け方、ふと、美食倶楽部を立ち上げた才人のことが脳裏に浮かびました。

 みずからつくった料亭を、みずからのワンマンさにより追われた北大路魯山人。究極の美と美食を追求した果てに行き着いたのは、子どものような素直さを持ち、自然の摂理にさからわない、淡々として、慾のない世界。最晩年にのこした魯山人の言葉。

 ― わたしは山鳥やまどりのように生きたい。
     太陽とともにめざめ、日が沈んで眠る山鳥のように。

EDIT  |  17:28 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
2008.08.03(Sun)

欲望という名の自転車 


  昔々よんだ童話にこんな話がありました。

 ある日まちを統治している王様が、高価な宝石のいっぱい入った壺に手を入れて中のモノを取り出そうとしたところ、手が抜けなくなってしまいました。王様も取り巻きの人たちも真っ青になっておおあわて。しかしあらゆる方法を試してみましたが、どうしても壺から手が抜けません。壺を壊すにも壺じたいがたいへん高価なもの。さてどうしたもの
か。みんな途方に暮れてしまいました。

 そこで城内の知恵者が一案を講じ、まちへオフレを出すことにしました。「壺を壊さないで見事王様の手を壺から取り出せたら山ほどの褒美をつかわす」と。

 このオフレを見て城下のまちからは、毎日たくさんの人たちがホービ目当てに押しかけました。でも実際にやってみると、どれ一つ壺を壊さないで手を取り出す方法はありませんでした。やがてお城へ上がろうとする者もいなくなり、城内でも壺を壊すしかないと諦めかけていたところへ、一人の青年がポツンとやってきました。訊くと昨夜、3年間の修行から戻ったばかりという若い石工(いしく)でした。お城の者たちは誰も期待していませんでしたが、王様が最後のひとりとしようというので王様の前に通したわけです。
「壺を壊さないというのが条件だからな」
 王様はどうせできまい、という表情で念を押しました。
「はい承知しております。」
 若い石工は春風のような笑みを浮かべていいました。
「王様。壺の中で握りしめている手をひろげてみてください」
 そこにいた全員がキョトンとしました。ところが、いわれるままに、王様が壺の中で手をひろげてみると、あれほど抜けなかった手がするりと抜けたのです。

 …… 王様は欲張りすぎて、てのひらいっぱいに宝石を握りしめていたため、壺から手が抜けなかったのです。若い石工は抱えきれないほどのホービをもらい、お城をあとにしたのでした。



 後 記)
 欲望にもさまざまなものがありますが、いずれの場合においてもあまり欲をかかず、ほどほどの謙虚なところで折り合いをつけて日々すごしてゆくのが、無用な摩擦や思い悩みを生まず、すらすらゆくコツのようです。
EDIT  |  22:55 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
2008.07.10(Thu)

Space 

 
   キューブリックやタルコフスキーはどうして宇宙を舞台に選んだのだろう。
   まあ、物語りは、物語りのないところから立ちのぼってくるものだからね。
   いまとなっては、スタンリー・キューブリックもアーサー・C・クラークも、
   アンドレイ・タルコフスキーもスタニスワフ・レムも、みな鬼籍の人になっ
   てしまった。


2001宇宙の旅かく語りき未来知るやコンピュータハル

俯瞰のアングルから
生きることへのノスタルジアを奏でる
アンドレイ・タルコフスキーの寡黙な世界は
すべての人のこころのなかにある せつない宇宙である


    KAKEJIKU Ⅰ

 Clear night sky to the moon rising
 Brown horse in a balloon is flowing
 Around the decorated flowers, have a -
    - Ferris wheel of paper
 Teardrops are reflected beyond
 The crystalline lens of memory is soon -
    - turn into constellations
 Emissary to tell Dune's time is still not
    Sheepdog still asleep


    掛け軸Ⅰ

 澄んだ空に月が昇った

 青鹿毛の馬が 気球にのって流れていく
 花飾りのまわりには 紙の観覧車

 さかさまに映る 涙のしずく
 記憶の水晶体は たちまち星座へと変わる

 砂丘の時刻を知らせる使いは まだ こない
 牧羊犬も まだ 眠っているのだ



    Favorites ...

 W・Kandinsky, P・Klee, G・Klimt,
 Man Ray, Marcel Duchamp, Giorgio de Chirico,
 Joan Miro, Saint-Exupery, Prosper Merimee, J.M.G. Le Clezio, .....

 葛飾北斎 HOKUSAI, 歌川広重 HIROSHIGE, 東洲斎写楽 SHARAKU, .....
 宮崎 駿 Hayao Miyazaki, 安部公房 KOBO ABE, 寺山修司 SYUJI TERAYAMA, .....

EDIT  |  23:46 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
2008.07.09(Wed)

大学ノートから③ 

 はじめに)

 1993年~2000年までの間にテーマを設けず自由に綴った6冊の大学ノートから拾いあげたものを載せてみます。
 あるときはみずからの勉強のための覚え書きとして、あるときは日々の呟きや思いを記す日記として、またあるときは小説のネタ帳や詩の草稿として、おりおりに書き留めていったものです。掲載するにあたって、若干、表現の推敲を要するものもありますが、すべてのフレーズを比喩としてお読みいただければその点も杞憂に終わるだろうと考え、冒頭にこの断り書きを置くことにしました。



 ●おそるべき才能を持った人たちが、次々に埋もれてゆく。

 ●少年アグバよ。あなたがヨーロッパへひろめた駿馬ゴドルフィンの血が、数百年
 という歳月を経た今でも世界中で活躍しています。

 ●砂時計の砂のように、時間(とき)は容赦なくてのひらのすきまから、サラサラ
 とこぼれ落ちてゆく。
 「待ってくれ!」
 声をからして叫んでも、時間は容赦なく過ぎてゆく。
 無情だ。だから人は祈るのだろう。

 ●人はそれぞれ自分の価値観、自分の言葉・表現力を獲得し、いつでもそれを発言
 しうるように準備しておく必要がある。そのためには日頃から、できるだけ、感情
 よりも客観性を優先して、何事も考える習慣を身につけなければならないだろう。

  …… すべてはそこからはじまる。

 ●からだじゅうが疼いている。すべてのことがいかんともしがたいから、疼いてい
 るのか。 …… なにもみえない。

 ●おいらのとおくを見つめる視線のさきにあるもの。それは砂漠の国。そこから垂
 直に宇宙のかなたへ。

 ●実践でいかせなければ、頭がいいとはいえない。

 ●ああ、ゆとりがほしいなあ。おおぞらを悠然と旋回する鳥のように ……。

 ●さむい。 さむい。 さむい。 なにもかもが、さむざむとしている。

 ●涙の数だけ強くなれるほど、人は強くかしこいだろうか?

 ●世間ではあたりまえでも、おれにはあたりまえじゃないことが山ほどある。

 ●実験映画のためのシナリオ草稿

  陸上競技場のフィールド。
  マッチョな槍投げの選手が助走をつけ、ふりしぼった声とともに、青々とした空
  へ向けて槍を投げる。
  アップで映しだされる、めらめらと燃えたぎる太陽。
  投げられた槍はその太陽のなかに消えてゆく。

  黒い棺をかついでゆく葬列。
  膨らんだ妊婦のむきだしの腹。
  潮騒の音と銃声。そして鴉。

 ●きのうからきょう、きょうからあすへ。
 その一貫した時間の奔流のなかで、ヒトは毎日考える葦になる。

 ●変化速度の早い現代にあって、いまやテツガクというシロモノは故事ですナ。
 故事。事故ではありません。故事です。 …… 哲学するゆとりもない時代。
 でも戦争をするゆとりはあるのだ。

 ●虚数ライフ
  ― 平方しても負になる理論上の数…「虚数」。(虚数=i, i2=-1)
 人の生きてゆく過程は、必ずしも級数的に加算されるとはかぎらない。
 そこに想像力の存在価値もある。
 しかし、うかうかしていると、虚数のまま人生が終わってしまいそうだ。


大学ノートvol.1~vol.6(1993~2000)から。
EDIT  |  01:38 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
2008.06.28(Sat)

大学ノートから② 

 はじめに)

 1993年~2000年までの間にテーマを設けず自由に綴った6冊の大学ノートから拾いあげたものを載せてみます。
 あるときはみずからの勉強のための覚え書きとして、あるときは日々の呟きや思いを記す日記として、またあるときは小説のネタ帳や詩の草稿として、おりおりに書き留めていったものです。掲載するにあたって、若干、表現の推敲を要するものもありますが、すべてのフレーズを比喩としてお読みいただければその点も杞憂に終わるだろうと考え、冒頭にこの断り書きを置くことにしました。



 ●日曜日の夜ほど孤独な夜はない。
  日曜日の夜ほどさびしい夜はない。

 ●現実も物語(ドラマ)もみんな虚像だ。

 ●「人生の遠まわり」 (寓話の草稿)
 たとえば東京から横浜へ行きたいと思う1人の男がいたとしよう。ところが彼は、横浜がいずれの方向に位置するのか分からない。そこで彼は行きずりの人たちに尋ねてみた。
  -横浜はどちらの方向になるでしょうか?
 するとある人は北の方角を指さし、ある人は西の方角を、またある人は東の方角を指さし、別の人は南の方角を指さした。その答えがあまりにばらばらなので、彼は頭を抱え込んでしまった。誰の指さす方角に行けばいいのだろう?
 考え抜いたすえ、彼は自分の信じる方角に向けてすすむことにした。つまり「東の方角」に向けて出発したのである。西へすすめば30分足らずで行けるものを、まったく正反対の方角を選択したために、彼は、東京から横浜に向かう「地球一周の道程」に一生を費やしてしまったのである。

 ●ひとは誰もみなふりかえりたくない過去を持っている。

 ●「匂いと精神安定効果について」
 お寺の境内。
 石畳の上をゆっくりと歩いてゆき、階段を登りきったところで靴を脱いで本堂に入る。すこしひんやりする。そしてかすかにお香の匂いがただよってくる。すーっと心が落ち着いてゆく気がする。かたくなになっていた心がやわらいで、やさしい気持ちがよみがえってくる。やすらぎを感じる。

 たいてい敷地がひろく、緑があり、静けさに包まれた環境にあるということもあるが、本堂にさり気なくただようお香の匂い、この心地よい匂いがなかったら、心のやすらぎはだいぶ薄らいでしまうかも知れない。 室内やトイレ、車の中などの片隅に置かれている柑橘系の芳香剤なども、心を安定させる効果を発揮していると思う。

 ●人にはどうしてツノがないのだろう。角田(つのだ)という姓はあるが、ツノはない。たぶんシッポと同じように、進化する過程で退化したにちがいない。

 ●「経験から学ぶ」ということは、必ずしも、年齢と比例していることを意味しているわけではない。

 ●いずれ死にゆくものを山羊は世にでむとす。

 ●「やけに静かだな」
  目がさめたら、東京には誰ひとりいなかった。
        (丸一昼夜)
  何事もないいつもの朝が……。
  駅のホームは人であふれ、せわしいラッシュアワー。

 ●自分じしんであることに集中できない苛立ちと悔しさ。

 ●どうやら空には雷神がきたようだ。ここ2~3日、夜空に月が見えない。


大学ノートvol.1~vol.6(1993~2000)から。この項つづく。
EDIT  |  17:50 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
2008.06.24(Tue)

大学ノートから① 

 はじめに)

 1993年~2000年までの間にテーマを設けず自由に綴った6冊の大学ノートから拾いあげたものを載せてみます。
 あるときはみずからの勉強のための覚え書きとして、あるときは日々の呟きや思いを記す日記として、またあるときは小説のネタ帳や詩の草稿として、おりおりに書き留めていったものです。掲載するにあたって、若干、表現の推敲を要するものもありますが、すべてのフレーズを比喩としてお読みいただければその点も杞憂に終わるだろうと考え、冒頭にこの断り書きを置くことにしました。



 ●現実と真実は、必ずしも一致するとは限らない。

 ●物事を2元的にしか考えないところに、日本人の落ち度がある。

 ●地球が日本だけでなくてよかった!

 ●世界中にあるすべてのお金を集めても買えないもの。
  命。時間。そして才能。

 ●まったく何の変化もないという状況に、人間は長時間耐えることができない。

 ●炎天下。あついあついと言いながら歩くのも、夏の楽しみの1つである。

 ●風がながれ、光がふりそそいでいるのに、ぼくらはそれを感じることを忘れて
  しまっている。

 ●「ねえ。そんなことより、アッチの話しない?」
  「あっちの話? ― ちくしょう、また豚の話か!」

 ●自殺でも事故でもいいから、1日でも早くあの子が死んでくれたらと、母は
  毎日のようにお祈りをしていた。

 ●おんなは刃物だ。

 ●「女の生きがいは、男を誘惑することよ」

 ●とりつかれるほどの集中力とエネルギーがなければ、新しいものなんて創造
  できない。

 ●毎日がはげしい陣痛の連続だとしたら、ひとは、自殺するか、発狂するしか
  ないだろう。

 ●たとえば、客室乗務員とかテレビ局の入社試験の場合。面接をクリアする条
  件として「できるだけブスであること」という項目があるとしたら、女子大
  生たちは「できるだけブスになるように」必至で努力するだろうか?


大学ノートvol.1~vol.6(1993~2000)から。この項つづく。
EDIT  |  21:30 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
2008.06.06(Fri)

ねむるまえに 

 ウタはいいね。

 国境を超えて、
 時空も超えて。

 エセ詩人や、
 エセ歌うたいも多いけど、

 いいウタに出会うとさ、
 こう、なんてゆうか、しあわせだね。

 理屈もいらないし、
 構える必要も、ない。

 ウタは …… いいね。
EDIT  |  23:20 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
2008.04.20(Sun)

いろあおきサカナ 



 いろ青き魚はなにを悲しみ
 ひねもすそらを仰ぐや
 そらは水の上にかがやき亘りて
 魚ののぞみとどかず
 あわれ そらとみずとは遠くへだたり
 魚はかたみに空をうかがう

室生犀星「未刊詩篇」無題詩

 抒情性の強い作品を書いた室生犀星(むろうさいせい)のこの詩は、ながいあいだ記憶の奥深いところに眠っていて、数年前からときどき思いだしたりする機会がでてきました。

 犀星が若いころ、やはり同じように若かった気鋭の詩人・萩原朔太郎と運命的な出会いをし、そのことが、犀星を詩と文学の道へすすませる後押しをすることにもなったのですが、まだ朔太郎じしん地方住まいで、詩壇に顔をだしたばかりの新人の時期のことでした。才気のある人たちは、目に見えない磁力のようなもので、たがいに引きつけあうものなんでしょう。

 室生犀星は詩だけではなく小説も書き、そのかたわら、草創期の芥川賞の選考委員を務めていたと記憶しています。たしか火野葦平の「糞尿譚」が芥川賞を受賞したときの選考委員の1人で、最初、内容が汚いとかいって受賞に反対していたのが、別の選考委員から「きみの書くものだって汚いじゃないか」と指摘され、カッとなってのすったもんだのすえ、犀星も矛先をおさめて賛成にまわり、結果、火野葦平の作品が第6回芥川賞受賞作に決まったという経緯だったと思います。

 ふるさとは遠きにありて思うもの/そして悲しくうたうもの

 そう詩(うた)った犀星も、この超ハイスピードのネット時代にあっては、自分じしんの存在が遠きものとなってしまい、今では、ぼくよりもずっと年長の世代の人たちでさえ室生犀星の名を思い起こすこともないであろうということが容易に推察できる、ゆとりのない、乾いた時代となりました。犀星には「女ひと」(=にょひと)という独特の嗅覚・皮膚感覚でつづられた風変わりな随筆があって、たいへん興味ぶかく読んだ覚えがあるのですが、さて、もう絶版になって久しいのでしょうか……。

  室生犀星記念館ホームページ
  室生犀星記念館 軽井沢観光ガイド
  情報を集めてみると思い起こす人たちはちゃんといますね。
EDIT  |  21:30 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
2008.04.18(Fri)

イメージトレーニング 

  たった1行の言葉でも、作り方によっては、とても貴重なイメージトレーニングになるんですよ。……というわけで今夜は、すこし1行詩をひもといてみます。

 ● つるつるの満月をむく 果物ナイフ。

 ● 鳥。 昼顔。 日記。 ヌード。 時計。 血。

 ● 眼球。 子宮。 Ⅹ線。 …カルテの手記。

 ● 青 蛙 。 月まで跳ねたら 通りゃんせ。

 ● ゆうべ飛んだ青いさかな。いま眠ってる。

 ● オシャレ為替相場 1ネイル ≒ 3マスカラ
 ● 記 憶÷(少女+クレヨン)× 繭 ≧ 睡 眠 
 ● 水 銀÷(花火+カルピス)× 月 ≧ 写 真 
 ● 少 女×(髪型+ブラウス)÷ 風 ≦ 日 記 


  こちら(東京)もずいぶんな雨です。最近は1年を通して雨のすくない年が休みなくつづいているので、個人的には「1年間の限定」だったら、毎日雨でもいいくらいです。でも大雨には災害がつきものですので、みなさんもそのへんはくれぐれもご注意ください。

  全国の短時間降水予報-天気予報コム

テーマ : 一行詩 - ジャンル : 小説・文学

EDIT  |  23:53 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
2008.04.13(Sun)

ライフワーク 

 もう2ヵ月ほどになるかもしれませんが、ブログの更新を告げるpingがGoogle以外ほとんど飛びません。ながいあいだ、更新しても更新してもアクセスの様子がヘンなので、さすがにおかしいなあと思い、このブログサイトのユーザーで共有する掲示板をのぞいてみたら、けっこういるんです。飛んでいないっぽい人が。

 そこで念のために、あらたに投稿した自分の記事を、随時、検索してみているのですが、google以外はほとんどヒットしないんですね。つまり検索しても、まったくでてこない。 これまでは、あらかじめ設定しているping送信先各所(8つほど)とも正常に飛んでくれていたので、 投稿後、YAHOOやgooほかどこのブログ検索にもすみやかに反映されていたのですが……。

 展覧会案内をはじめとするリアルタイムな情報は即時性がイノチなので、検索しても記事そのものがでてこないと、やはりがっかりはします。他の方法もいろいろ試してみてはいるのですが、結果は同じ。もともと正常に機能していたものが、どうして機能しなくなったのか、そこのところは不明で、使っているサーバーや個々のユーザーによっても、「飛んでいる人」と「飛んでいない人」のバラつきがあるようだし、提供元のほうも状況のリサーチや原因の究明、改善にむけた動きをとっているのかどうか、書き込みに対する回答がないので、その点もまったく分かりません。

 かろうじてGoogleにだけは正常に飛んでいるようなので、最近はもう「それでよし」 ということに(一応は)していますが、ときに、まったく魚のいないところで懸命に釣りをしている釣り人みたいな気がして、ふとわれにかえってしょんぼりすることもあります。

 しかしまあ、これは、さし当たって自力ではいかんともしがたい問題ですし、たくさんのユーザーが動画投稿サイトへシフトしている昨今でもありますので、システムが正常に作動するよう軌道修正されたとしても、案外、五十歩百歩かもしれません。

 解決策はおいおいをさぐっていくとして、個人的にはこの件のほかに、これからのヴィジョンについても考えているところなんですけれども、今後の活動のあり方としては、ブログもホームページもともに、(たとえば好みなど)もっと自分自身寄りの視点のほうにウエイトを置いて、一種のライフワークとして運営していこかなと、そんなふうにイメージしているところです。

テーマ : 思うこと - ジャンル : 学問・文化・芸術

EDIT  |  22:05 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
2008.04.06(Sun)

さかなの睡眠 

 ちかごろ、ふとした瞬間、視界に、素早く動くものを見るようになりました。たしかめてみると、誰もいない。なにもない。う~む。ぼくもそろそろお迎えがちかいのかもしれないね。

 ひとの生死は無常の風。あとどれくらい猶予されているのか分からないけれども、与えられた寿命をまっとうするしかないですな。しかし世の中には、あきらかに早世と思われる人たちもたくさんおります。ぼくの小・中・高の同級生なんかもそう。20代で5人逝きました。それからするとぼくなんか、長生きしてます。

 (それはさておき)今年の2月、野暮用でとあるビルに立ち寄ったさい、10年以上前に知り合った人に偶然あいました。すでに日はとっぷりと暮れ、吐く息も白いなか、しばらく立ち話をしたのですが、そのとき、その人とも共通の知人で、その後どうしているのか気になっていたもうひとり別のYさんの消息について尋ねてみたんです。そうしたら、亡くなったという答がかえってきて、一瞬、あっけにとられていました。ひさしぶりに会ってみたいと思ったりしていたからです。亡くなったのは最近ではなく、すこし前のことだと話していました。

 Yさんはかつて松田優作のマネージャーだった人でしてね。 同い年だと言っていました。

 とても尊敬していたんですよね。優作さん優作さんて。アメリカロケにいったときのエピソードなど、秘話もすこし聞かせてくれましたが、ちょっと人前ではいえないような話なので、むろんここにも書けません。秘話……ですのでね。

 大ヒットしたテレビドラマ「探偵物語」にも、1回きりですがでてるんですよね。なんでも台本になかった役を、松田優作の特別のはからいで、きゅうきょ書き入れてもらって出演したそうです。

 車体のひくい赤のカウンタックを飛ばしながら笑いころげる「蘇る金狼」の終盤のシーン。あの場面の表情とバックに流れるテーマ曲は、今でも好きです。

 松田優作という人は、なりも大きかったですが、ふところの据わったスケールの大きい人だっと思います。そして人一倍こわれやすいガラスのような神経と、はてしなく遠いさきのさきまで考え抜く理知の通った人だったと思います。遺作となった映画「ブラック・レイン」を見たロバート・デ・ニーロがまず真っ先にいったのが、「サトウを演じているこの俳優はいったい誰なんだ!」という驚嘆の言葉だったんだよねと、Yさんはいっていました。間違いなく共演していたはずなんだけど、……と。



  

  蘇える金狼のテーマ/歌 前野曜子

  古びたジャズが夜明けを待つ店で 馴じみの顔に鳴り響く
  理由などいらない傷跡隠す人 抱いてむさぼりつきなよアタシの身体を

  OH CHANGES IN MY LIFE
  OH CHANGES IN MY LIFE

  「生まれた事が間違いだ」と笑い 名前も告げず立ち去った
  愛などいらない明日を殺す人  抱いてむさぼりついてやるアンタの心

  OH CHANGES IN MY LIFE
  OH CHANGES IN MY LIFE

  足音をたてず影を潜め 
  燃え上がる真昼の落とし穴 物言わぬ獣の血をかきたてる
  燃え上がる真昼の欲情が 今日の都会を地獄に近づける

  街はいつしかざわめきとだえ 心失くした顔がある
  夢などいらない眠りに陥ちぬ人 抱いてむさぼりつきなよ今だけは

  OH CHANGES IN MY LIFE
  OH CHANGES IN MY LIFE

  動く標的狙いをつけて
  燃え上がる真昼の静けさは 塒を失くした獣の涙
  燃え上がる真昼の沈黙は 今日を賑わう都会の裏の顔

  OH CHANGES IN MY LIFE
  OH CHANGES IN MY LIFE OH CHANGES
            :

EDIT  |  17:20 |  さかなの睡眠 .......  | Top↑
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