2008.04.20(Sun)

いろあおきサカナ 



 いろ青き魚はなにを悲しみ
 ひねもすそらを仰ぐや
 そらは水の上にかがやき亘りて
 魚ののぞみとどかず
 あわれ そらとみずとは遠くへだたり
 魚はかたみに空をうかがう

室生犀星「未刊詩篇」無題詩

 抒情性の強い作品を書いた室生犀星(むろうさいせい)のこの詩は、ながいあいだ記憶の奥深いところに眠っていて、数年前からときどき思いだしたりする機会がでてきました。

 犀星が若いころ、やはり同じように若かった気鋭の詩人・萩原朔太郎と運命的な出会いをし、そのことが、犀星を詩と文学の道へすすませる後押しをすることにもなったのですが、まだ朔太郎じしん地方住まいで、詩壇に顔をだしたばかりの新人の時期のことでした。才気のある人たちは、目に見えない磁力のようなもので、たがいに引きつけあうものなんでしょう。

 室生犀星は詩だけではなく小説も書き、そのかたわら、草創期の芥川賞の選考委員を務めていたと記憶しています。たしか火野葦平の「糞尿譚」が芥川賞を受賞したときの選考委員の1人で、最初、内容が汚いとかいって受賞に反対していたのが、別の選考委員から「きみの書くものだって汚いじゃないか」と指摘され、カッとなってのすったもんだのすえ、犀星も矛先をおさめて賛成にまわり、結果、火野葦平の作品が第6回芥川賞受賞作に決まったという経緯だったと思います。

 ふるさとは遠きにありて思うもの/そして悲しくうたうもの

 そう詩(うた)った犀星も、この超ハイスピードのネット時代にあっては、自分じしんの存在が遠きものとなってしまい、今では、ぼくよりもずっと年長の世代の人たちでさえ室生犀星の名を思い起こすこともないであろうということが容易に推察できる、ゆとりのない、乾いた時代となりました。犀星には「女ひと」(=にょひと)という独特の嗅覚・皮膚感覚でつづられた風変わりな随筆があって、たいへん興味ぶかく読んだ覚えがあるのですが、さて、もう絶版になって久しいのでしょうか……。

  室生犀星記念館ホームページ
  室生犀星記念館 軽井沢観光ガイド
  情報を集めてみると思い起こす人たちはちゃんといますね。
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